Archerの春秋

英語の翻訳や格闘ゲームをする人が、中国古典について書いています。

俺、この戦争が終わったら…

 秋,齊侯伐晉夷儀。敝無存之父將室之,辭,以與其弟,曰..「此役也,不死,反必取於高、國。」先登,求自門出,死於霤下。(『春秋左氏傳』定公九年)
 【杜注】無存,齊人也。室之,爲取婦

 春秋時代も終わりに近づく頃、斉が晋を攻めたときの話。

 斉には敝無存という人物がおり、父親が自分のために迎えた妻を断って弟に娶らせていた。そこで「俺、この戦が終わったら、高・国氏から妻を迎えるんだ」とのセリフを残して真っ先に城壁をよじ登り、内側から城門を開けて出ようとしたが、無事戦死してフラグを回収した。

 こちらでも書いたように、『左伝』では身分のそれほど高くない人物が自ら城壁に取り付いて武勇を示すシーンがたびたび描写されている。斉で敝氏というのはちょっと聞かない氏なので、敝無存も家格が低い人物と見られる。
 斉で上卿を代々輩出した名門の高氏・国氏の娘を娶るという発言から、上昇志向の強い人物だったと推測でき、無茶に見える城壁への攻撃もその野心の発露だったのだろう。

 それにしても見事なまでの死亡フラグ発言とフラグ回収である。古代中国は思った以上に時代を先取りしていた。