Archerの春秋

英語の翻訳や格闘ゲームをする人が、中国古典について書いています。

酖毒の効果

 成季使以君命命僖叔,待于鍼巫氏,使鍼季酖之。曰..「飲此,則有後於魯國., 不然,死且無後。」飲之,歸,及逵泉而卒。(『春秋左氏傳』荘公三十二年)
 【杜注】酖,鳥名。其羽有毒,以畫酒飮之,則死。

 又娶于江,生公子士。朝于楚,楚人酖之,及葉而死。(同 宣公三年)

 中国史で政敵を葬る際にたびたび使用される酖/鴆毒(ちんどく)。鴆という鳥の羽に毒があり、これを酒に入れて飲ませることで相手は死ぬ恐ろしいアイテムである。『左伝』では、酖毒は飲んですぐに死ぬわけではないことを示唆する文がある。

 荘公32年の荘公の後継を巡る争いでは、成季(公子友)の命を受けた鍼季(けんき)が、僖叔(叔牙)に「子孫を残したいならこれを飲め」と言って酖毒を飲ませた。叔牙はその帰途、逵泉で死んだという。逵泉がどのあたりかは不明だが、酖毒を飲んでから叔牙がしばらく生きていたことは確認できるだろう。

 また、宣公3年では、鄭の文公の子である公子士が楚に朝見した際に酖毒を盛られたが、死んだのは葉に到着してからだという。

 手元の地図を見てみると、楚都から葉までは直線距離でも400km以上離れている。


 
 ・小倉芳彦『春秋左氏伝』上(岩波文庫)の地図を一部マーキング

 公子士は酖を飲まされた後も、かなり長い間生きていたことになる。他の史料を精査したわけではないため明言はできないが、上記の記事から想像できる酖は、ジワジワと人体に影響を及ぼし徐々に死に至らしめるような毒だろう。

 もっとこう、グッと一息に飲んでグハァッと血を吐くのかと思っていたので意外といえば意外。むしろこっちのほうが恐ろしい